「広告 ROAS 高いのに 利益が出ない」とお悩みの方へ。
数値は良くても赤字になるのには、構造的な原因があります。
本記事では「損益分岐点ROAS」の計算式と改善策を解説します。
正しい目標設定を行い、高収益体質を作りましょう。
ROASが高くても利益が出ない構造的な原因
多くの経営者が「ROAS(広告費用対効果)は高ければ高いほど良い」と考えていますが、実際にはROASの数値目標を達成していても、手元のキャッシュが減っているケースが少なくありません。
ROASはあくまで「売上 ÷ 広告費」で算出される指標であり、そこには「利益」という概念が欠落しているからです。
広告管理画面上の数値が優秀でも、事業全体の収支が赤字であれば経営としては失敗です。
ROASが高くても利益が出ない主な構造的原因は以下の通りです。
- 原価率と変動費の圧迫による粗利不足 ROASの計算式には原価が含まれていません。
特にEC事業など原価率が高いビジネスでは、ROAS 500%(広告費の5倍の売上)が出ていても、原価率が60%あれば粗利は手元にほとんど残りません。
さらに決済手数料や梱包・配送費などの変動費を引くと赤字になる構造が見過ごされています。 - 固定費を賄いきれていない 広告費と変動費を回収できたとしても、人件費、家賃、システム利用料などの固定費をカバーできるだけの「絶対額としての粗利」が不足していれば、会社全体としては赤字です。
ROAS重視で広告費を絞りすぎた結果、売上規模が縮小し、固定費負担率が上がっているケースも散見されます。 - LTV(顧客生涯価値)の視点の欠如 焼畑農業的に新規顧客を獲得し続けている場合、CPA(獲得単価)が高騰すると利益が出なくなります。初回購入だけでROASを判断し、リピートによる2回目以降の利益(広告費のかからない売上)を計算に入れていないため、本来投資すべきタイミングで広告を抑制してしまう機会損失も起きています。
赤字を防ぐ損益分岐点ROASの計算式
「なんとなくROAS 400%あれば安心」という感覚的な運用は、経営判断を誤らせる最大の要因です。
利益体質のビジネスモデルを構築するためには、まず自社の「損益分岐点ROAS」を正確に把握する必要があります。
これは「この数値を下回ったら、売れば売るほど赤字になる」という撤退ラインです。
当社がコンサルティングを行う際は、必ずこの数値を算出し、クライアントと共有した上で戦略を設計します。
損益分岐点ROAS=1÷限界利益率
損益分岐点ROASは、以下の計算式で算出できます。
損益分岐点ROAS = 1 ÷ 限界利益率 × 100
ここで言う限界利益率とは、「1 – (原価率 + 変動費率)」のことです。 変動費には、商品原価だけでなく、送料、梱包資材費、決済手数料、ロイヤリティなど、売上に比例して発生するすべての費用を含めます。
具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。
商品単価:10,000円 商品原価:3,000円(30%) 送料・決済手数料等:1,000円(10%)
この場合、変動費率は合計40%となり、限界利益率は60%(0.6)です。
損益分岐点ROAS = 1 ÷ 0.6 × 100 = 166.6%
つまり、ROAS 167%が「広告費と変動費を回収してトントン」になるラインです。
しかし、これでは固定費や会社の利益が一切出ていません。
健全な経営を行うためには、この損益分岐点ROASに、固定費回収分と目標利益率を上乗せする必要があります。
一般的には損益分岐点ROASの2〜3倍、この例で言えばROAS 330%〜500%程度が、実質的な利益を生むための目標ラインとなります。
当社の平均ROASが600%である理由は、単に広告運用が上手いからだけではなく、この「利益が出る構造」をクライアントと共に設計し、無理のないKPIを設定しているからです。
インフレ下ではROASよりLTV・ROIを重視
2025年現在、世界的なインフレにより原材料費、物流費、人件費といったあらゆる調達コストが上昇しています。
これにより限界利益率が低下傾向にあるため、従来と同じROAS基準で運用していると、利益が圧迫される事態に陥ります。
短期的なROAS(売上の対費用効果)だけを追うと、獲得効率の良い層だけに配信が絞られ、ビジネスの規模が縮小均衡に向かいます。
経営者が今見るべき指標は、ROASから「ROI(投資利益率)」および「LTV(顧客生涯価値)」へとシフトさせる必要があります。
調達コスト上昇を吸収するLTV最大化
獲得コスト(CAC)が上昇しても、一人の顧客が長期的に支払ってくれる総額(LTV)が高ければ、事業は成長します。 初回取引がトントン、あるいは多少の赤字であっても、半年・1年単位で見て十分なROI(投資リターン)が出るならば、それは正しい投資です。
当社が提唱する「Profit First」の思想では、以下のステップでLTVを最大化し、インフレに負けない利益体質を作ります。
- CRMとSNS運用の統合 広告で獲得した顧客に対し、LINE公式アカウントやInstagram、メルマガを通じて関係性を構築します。
広告費をかけずにリピート購入を促す仕組みを作ることで、2回目以降の利益率を劇的に高めます。 - クロスセル・アップセルの自動化 単品購入で終わらせず、購入直後のサンクスページやステップメールで関連商品を提案し、客単価(AOV)を引き上げます。
これにより、同じ広告費でも回収できる利益額が増加します。 - ブランド資産の構築 「価格」ではなく「価値」で選ばれるブランド作りを行うことで、価格競争から脱却します。
短期的なPL改善だけでなく、中長期的なブランド戦略を組み合わせることで、適正価格での販売を維持します。
広告費を資産に変える内製化のアプローチ
広告運用を外部の代理店に依存し続けることも、利益率を圧迫する要因の一つです。 一般的な広告代理店の手数料は広告費の20%程度ですが、年間広告費が5,000万円なら1,000万円が手数料として流出します。
この1,000万円がそのまま利益になれば、経営の安定性は大きく向上します。
また、外部依存が続くと、マーケティングの知見や顧客データといった重要な資産が社内に蓄積されません。
ノウハウを社内に蓄積し外注費を削減する
マーケティングは経営の根幹であり、そのノウハウを社内で保有することは、長期的な企業価値向上に直結します。
特にAI技術が発達した現在、広告運用の自動化・効率化が進んでおり、適切なトレーニングを受ければ、社内担当者でも高度な運用が可能な時代になりました。
当社は「ずっと代行し続ける」ことで手数料を稼ぐモデルではなく、「戦略→戦術→内製化」までをワンストップで支援するパートナーです。
最初はプロが運用して成果を出し、そのプロセスを可視化しながら、徐々に貴社の担当者を育成してバトンタッチします。
少数精鋭で高い利益率を実現するためには、AIエージェントの活用と内製化によるコスト最適化が不可欠です。 広告費を単なる「消費される経費」で終わらせず、自社の「資産(顧客リスト・ノウハウ・人材)」に変えていく視点を持つことが、10年先も生き残る企業の条件です。
利益が出ない構造にお悩みであれば、まずは現状の損益分岐点を正しく把握し、LTVを含めた全体設計を見直すところから始めましょう。