PL(損益計算書)改善のために広告費をどう見直すべきか、マーケティング投資の判断に悩んでいませんか?

今回はLTV(顧客生涯価値)・CAC(顧客獲得単価)を起点に損益構造を因数分解し、単なるコスト削減ではなく、構造的な「利益体質」へ変えるための具体策を紹介します。

PL改善の第一歩は「LTV・CAC」視点での損益構造の可視化

経営者がPLの改善を考える際、単に「広告宣伝費」や「販売促進費」という勘定科目の合計額を削減しようとするのは得策ではありません。

マーケティング投資におけるPL改善の本質は、コストの総額削減ではなく、投資対効果(ROI)の最大化にあるからです。

そのためには、PL上の数字を「ユニットエコノミクス(1顧客あたりの経済性)」に因数分解して捉え直す必要があります。

具体的には、以下の要素で損益構造を可視化します。

  • 収益の源泉 ≒ LTV(顧客生涯価値) × 顧客数
  • 投資コスト ≒ CAC(顧客獲得単価) × 新規顧客数
  • 事業利益 ≒ (LTV - CAC - 原価) × 顧客数 - 固定費

PLを健全化するためには、「LTV > CAC + 原価」の状態を作り出し、その差分(利益幅)を広げることが絶対条件です。

多くの企業では、CPA(獲得単価)を下げることだけに注力しがちですが、LTVが低ければ、いくら安く獲得しても構造的な赤字からは脱却できません。

当社(ワンプロデュース株式会社)が掲げる「利益改善原則」の思想に基づけば、まずは現状のLTVとCACを正確に算出し、どのチャネルや施策が真にPLに貢献しているかを判定することから改善が始まります。

インフレによるコスト増を吸収するLTV改善の重要性

2025年現在、企業経営を取り巻くコスト環境は劇的に変化しています。

原材料費、物流費、人件費の高騰に加え、デジタル広告市場の成熟に伴い、CPM(インプレッション単価)やCPC(クリック単価)も上昇傾向にあります。

あらゆる調達コストが上昇するインフレ下において、従来のような「安く大量に集客して薄利多売で回す」モデルは、PLを急速に悪化させる要因となります。

外部要因によるコスト増(CACの上昇や原価の高騰)を吸収し、利益を確保するために不可欠なのが「LTVの改善」です。

具体的には、以下の要素を強化することで利益体質への転換を図ります。

  • 単価アップ(アップセル)
    商品価値の再定義やバンドル販売により客単価を引き上げ、CAC上昇分をカバーします。
  • リピート率の向上
    CRM施策やSNSを通じたファン化により、2回目以降の購入(実質CACゼロ)の売上比率を高めます。
  • 解約率(チャーンレート)の低減
    サブスクリプションや継続型サービスにおいては、新規獲得よりも維持にリソースを割く方がPL改善へのインパクトが大きくなります。

広告・SNS・LPを統合し、無駄な販管費を削減する具体策

PL上の「広告宣伝費」や「外注費」が肥大化し、利益を圧迫している最大の原因は、マーケティング施策の分断にあります。

よくある失敗ケースとして、広告運用は代理店A、SNS運用は社内の新人担当者、LP制作は制作会社Bといった具合に、戦略と実行部隊がバラバラになっている状況が挙げられます。

これでは各施策が一貫性を欠き、ユーザーに矛盾したメッセージが届くため、CVR(成約率)が低下します。

結果として、同じ売上を作るために必要な広告費が膨らみ、CPAが高騰するのです。

当社の支援実績(累計広告運用額15億円以上、平均ROAS 600%)から導き出された結論は、「戦略からクリエイティブまでを統合管理することで、無駄なコストは大幅に削減できる」ということです。

広告・SNS・LPを一つの線で繋ぐことで、以下のメリットが生まれます。

  • 検証サイクルの高速化
    SNSで反応が良かった訴求を即座に広告クリエイティブやLPに反映でき、無駄なテスト予算を削減できます。
  • データの統合
    各チャネルのデータを横断的に分析し、アトリビューション(間接効果)を加味した適正な予算配分が可能になります。
  • 外注管理コストの削減
    複数のベンダーとのやり取りにかかる人件費(見えないコスト)を圧縮できます。

分断された施策をつなぎ合わせCACを下げる統合戦略

施策を統合し、CAC(顧客獲得コスト)を引き下げるためには、ユーザーの購買プロセスに沿った「一気通貫」の設計が必要です。各フェーズでの離脱を防ぎ、歩留まりを改善することが、最終的なPL改善に直結します。

具体的な統合アプローチは以下の通りです。

  1. 認知(SNS・動画)
    YouTubeやTikTokなどのSNSを活用し、潜在層への認知を広げます。
    ここでは直接的な刈り取りを行わず、ブランドへの親近感や信頼を醸成することに注力し、指名検索数を増やします。
  2. 獲得(運用型広告)
    Google広告やSNS広告を活用し、顕在層へアプローチします。SNSですでに認知している層に対しては、CTR(クリック率)が高くなりやすく、結果としてCPC(クリック単価)を抑制できます。
  3. 成約(LP・LPO)
    広告の訴求内容と完全に整合性の取れたLPを用意します。
    広告文とLPのファーストビューのメッセージを一致させるだけで、直帰率が改善し、CVRが向上します。

このように、上流から下流までを一貫した戦略で設計することで、部分最適による予算の浪費を防ぎ、筋肉質なPLを実現します。

外注依存からの脱却と「内製化」による利益率の最大化

マーケティング業務をすべて外部パートナーに依存し続けることは、PL構造上、固定的なキャッシュアウトが継続することを意味します。

特に売上規模が1〜10億円のフェーズでは、外注費の比率が高止まりし、営業利益率を圧迫するケースが散見されます。

もちろん、立ち上げ期や高度な専門性が求められる場面ではプロの活用が必須ですが、中長期的には「内製化(インハウス化)」を進めることが、利益率最大化の鍵となります。

当社が「戦略設計」から「内製化支援」までをワンストップで提供するのは、企業が自走できる状態こそが、最もコストパフォーマンスが高いと確信しているからです。

内製化には、代理店マージン(一般的に広告費の20%程度)の削減という直接的なコストカット効果に加え、社内にノウハウが蓄積されることで、市場変化への対応スピードが上がるというメリットがあります。外部依存の状態では、施策の変更にタイムラグが生じ、機会損失を招くリスクがありますが、内製化によってそのロスを最小化できます。

社内にノウハウを蓄積し広告費を資産に変える仕組み

広告費や制作費を単なる「経費(費用)」として終わらせるか、将来の売上を生む「資産(投資)」に変えるかは、社内にノウハウが残るかどうかにかかっています。

内製化を進めることで、PL改善に寄与する「資産」を社内に構築できます。

内製化によって蓄積される資産とメリットは以下の通りです。

  • 勝ちパターンの資産化
    「どんなクリエイティブが当たるか」「どのターゲット層のLTVが高いか」といった知見が社内に蓄積され、次回の施策成功率が高まります。
  • 人材の資産化
    社員がマーケティングスキルを習得することで、組織全体の生産性が向上します。
    当社では研修を通じて、未経験者でも運用可能な体制構築を支援しています。
  • 顧客データの資産化
    外部に依存せず、自社で顧客データ(1st Party Data)を管理・運用することで、より精度の高いCRM施策が可能になり、LTV向上に寄与します。

短期PL改善と中長期ブランド資産を両立させる投資判断の基準

PL改善において経営者が最も頭を悩ませるのは、「短期的な利益」と「中長期的な成長」のバランスです。目先のPLを良くするために広告費を削りすぎたり、過度な割引キャンペーンを行えば、一時的に利益は出ますが、ブランドが毀損し、将来的にはLTVが低下してジリ貧になります。

当社では、このジレンマを解消するために、「短期PL改善 × 中期ブランド戦略 × 長期資産形成」の三層構造でマーケティング投資を判断することを推奨しています。

投資判断の基準:

  • 短期(刈り取り領域):ROAS重視
    顕在層向けのリスティング広告などは、厳密にCPAとROASを管理し、即座に利益が出る範囲で投資します。
    ここはPLの「営業利益」に直結する部分です。
  • 中期(ブランド領域):LTV・指名検索数重視
    SNS運用や動画コンテンツは、即時のCVには繋がらなくとも、認知拡大と信頼構築に寄与します。
    評価指標はCPAではなく、エンゲージメントや指名検索数の推移で見ます。
  • 長期(資産領域):組織力・データ重視
    内製化への教育投資やデータベース構築は、将来のコスト削減と競争優位性の源泉となります。
    ここは単年度PLの費用ではなく、バランスシート上の資産構築に近い感覚で投資判断を行います。

「三方よし」の精神に基づき、売り手(自社)の利益だけでなく、買い手(顧客)にとっても価値があり、世間(社会)からも支持される事業成長を目指すには、この三つの時間軸を統合した戦略が必要です。


貴社のPL状況に合わせた、LTV・CAC起点の具体的な改善シミュレーションや、内製化に向けたロードマップについては、下記よりご相談ください。