広告費の適正比率を業界平均だけで決めていませんか?実はその判断、赤字を招く恐れがあります。
本記事では平均値ではなく、LTVと粗利から逆算して利益を最大化する予算算出ロジックを解説します。
広告費の適正比率を「業界平均」だけで決めてはいけない理由
多くの経営者様から「同業種の広告費比率は平均何%くらいか?」というご質問をいただきます。
一般的に、BtoBであれば売上の10〜15%、BtoC(特にECや通販)であれば20〜30%程度といった統計データは存在しますが、これらをそのまま自社の予算策定に適用するのは非常に危険です。
なぜなら、同じ業種・同じ売上規模であっても、「粗利率」「LTV(顧客生涯価値)」「事業フェーズ」という3つの変数が異なれば、投下できる広告費の許容範囲は全く異なるからです。
例えば、粗利率が80%の企業と30%の企業では、同じ売上1億円でも手元に残る利益原資には5,000万円もの差が生じます。
平均値を盲信して広告予算を組むことは、高収益体質の企業にとっては「成長機会の損失」となり、低収益体質の企業にとっては「致命的な赤字」を招く原因となります。
私たちワンプロデュース株式会社は、累計15億円以上の広告運用を通じて、数多くの企業の収益構造を見てきました。
その経験から断言できるのは、広告費の適正値は他社の平均ではなく、自社の「利益構造」からしか導き出せないということです。
- 粗利率による許容コストの乖離
業界平均の広告費率を適用しても、自社の原価率が高ければ利益は残りません。
逆に原価率が低いデジタルコンテンツなどの場合、平均値に合わせることで本来獲得できたはずのシェアを競合に奪われる可能性があります。 - LTV(リピート性)による投資判断の違い
単発販売のビジネスと、サブスクリプションやリピート通販のようなストック型ビジネスでは、初回獲得コスト(CPA)に対する許容度が数倍異なります。
LTVが高い場合、初回取引が赤字でも長期的には大幅な黒字になるため、平均比率を超えた積極投資が正解となるケースが多々あります。 - 成長フェーズと戦略目的の不一致
創業期やシェア拡大期には、利益を削ってでも認知獲得や顧客基盤の構築に投資する必要があります。
一方で、利益回収期にある企業がシェア拡大期と同じ比率で広告費を使っていれば、無駄なコストが発生している可能性が高いです。
自社のフェーズに合わせた予算配分が不可欠です。
LTVと粗利から逆算する「利益が出る広告予算」の算出ロジック
広告費を「コスト」ではなく「投資」として捉えるためには、ユニットエコノミクス(1顧客あたりの採算性)を基準にする必要があります。
売上全体に対する比率(%)で管理するのではなく、「1件の成約(CV)に対していくらまで払えるか」という限界CPAを算出し、そこから逆算して予算を決定するアプローチが、最も確実に利益を確保する方法です。
当社のクライアント様でも、平均ROAS 600%という高い成果を出されている企業は、例外なくこの「逆算思考」で予算をコントロールしています。
感覚や慣習ではなく、数式に基づいて経営判断を行うことが、利益体質への第一歩です。
限界CPAと目標ROASの具体的な計算手順
まずは、1人の顧客を獲得するために支払える上限金額である「限界CPA」を算出します。
ここでのポイントは、単回の売上ではなく、LTV(顧客生涯価値)をベースにすることです。
計算式:限界CPA = LTV × 粗利率 - 変動費(送料・決済手数料等) - 目標利益額
例えば、LTVが50,000円、粗利率が60%、変動費が5,000円、1顧客あたり確保したい利益が10,000円だとします。
この場合、
50,000円 × 0.6 - 5,000円 - 10,000円 = 15,000円
となり、CPA 15,000円までは広告費をかけても目標利益が確保できる計算になります。
次に、広告の費用対効果指標である目標ROAS(広告費回収率)を設定します。
計算式:目標ROAS(%) = 平均客単価 ÷ 目標CPA × 100
もし平均客単価が20,000円で、上記の計算で設定した目標CPAを10,000円(安全圏)とした場合、
20,000円 ÷ 10,000円 × 100 = 200%
となります。つまり、ROAS 200%以上で推移していれば、LTVベースでしっかりと利益が出ていると判断できます。
このように、自社の数値に基づいて限界値を把握しておけば、競合が広告費を吊り上げてきた際にも、撤退すべきか勝負すべきかを冷静に判断することが可能です。
事業フェーズごとの投資判断基準と広告費比率のコントロール
適正な広告費率は固定されたものではなく、事業の成長フェーズによって変動させるべきものです。
立ち上げ期であれば、LTVのデータが蓄積されていないため、想定LTVに基づき多少のリスクを取ってでも新規顧客の母数を集める必要があります。この時期は広告費比率が売上の30〜50%に達することも珍しくありません。
一方、安定期に入れば、既存顧客からのリピート売上が基盤となるため、新規獲得のための広告費比率は相対的に下がっていきます。
重要なのは、現在のフェーズにおいて「何を最大化したいのか(売上規模か、利益率か)」を明確にし、アクセルとブレーキを踏み分けることです。
短期的なPL改善と長期的な資産形成のバランス
マーケティング投資には、即効性のある「刈り取り型(リスティング広告など)」と、将来の資産になる「蓄積型(SEO、SNS、ブランディング)」の2種類があります。
短期的なPL(損益計算書)を良くするためには刈り取り型の広告が有効ですが、これだけに依存すると、広告費を止めれば売上が止まる自転車操業に陥ります。
CPAが高騰し続ける現在の市場環境では、このモデルは持続可能ではありません。
当社が提唱する「短期PL改善 × 中期ブランド戦略 × 長期資産形成」の三層構造では、初期は刈り取り型広告でキャッシュフローを回しつつ、その利益の一部を徐々にSNS運用や動画制作、オウンドメディアなどの資産形成へ再投資することを推奨しています。
例えば、広告費の20%を認知拡大やファン化のためのコンテンツ制作に充てることで、指名検索が増え、結果として全体の獲得単価(CPA)が下がるという好循環を生み出すことができます。
目先のROASだけでなく、1年後、3年後の集客基盤を作るための投資バランスを意識してください。
インフレ下でも利益を残すLTV改善とマーケティング内製化
昨今、人件費、原材料費、そして広告のクリック単価(CPC)など、あらゆる調達コストが上昇しています。
インフレ下において、単に広告運用を最適化するだけでは、以前のような利益率を維持することは困難です。
外部環境の変化に左右されず利益を確保するためには、一度獲得した顧客のLTVを最大化すること、そして外部への業務委託費を削減し社内にノウハウを蓄積する「内製化」が重要な鍵となります。
広告代理店にすべてを丸投げするスタイルから脱却し、社内にマーケティングの知見を持つ人材を育成することで、コスト削減と施策スピードの向上を同時に実現できます。
外部依存から脱却し資産を作る内製化ステップ
いきなり全てのマーケティング業務を内製化するのはリスクが高いため、段階的な移行をおすすめします。
当社では、戦略から戦術、そして内製化までをワンストップで支援しており、以下のステップで組織構築を進めています。
- 戦略設計と勝ちパターンの構築(外部プロ主導)
まずはプロの知見を活用し、広告・LP・SNSを連携させた「利益が出るモデル」を構築します。
成果が出ない状態で内製化しても、失敗する方法を社内に広めるだけになってしまいます。
まずは外部パートナーと共に、確実に成果が出る勝ちパターンを確立させます。 - 運用ノウハウの移管と担当者育成(協業フェーズ)
成果が出始めたら、徐々に社内担当者を実務に関与させます。定例会議での数値分析や改善提案のプロセスを共有し、なぜその施策を行うのかという「思考法」をインストールします。
当社では研修やOJTを通じて、担当者が自走できるスキルを養います。 - 完全内製化と高度な戦略支援への移行(自走フェーズ)
日々の運用業務は社内チームで完結させ、外部パートナーはより高度な市場分析や新規チャネルの開拓、クリエイティブの監修といった上流工程の支援にシフトします。
これにより、外注コストを抑えながらも、最新のトレンドや専門性を維持し続けることが可能になります。
広告費の適正比率を考えることは、すなわち自社のビジネスモデルと組織のあり方を見直すことです。
「広告費をかけても利益が残らない」「代理店任せで社内にノウハウがない」とお悩みの経営者様は、ぜひ一度当社の無料相談をご利用ください。
貴社のLTVとコスト構造を分析し、最適な予算配分と内製化へのロードマップをご提案いたします。
ワンプロデュース株式会社では、貴社の利益最大化に向けた戦略設計から実行支援まで、誠実に向き合います。